よもやま話
2018年11月09日
 肩こりを通して自分を知る 〜心身一如〜 (1)

 日本人は他民族に比べて「肩」への意識が強いといえます。その象徴として、日本語には「肩」のついた言葉が多く存在します。例えば、

「肩をいからす」
「肩をおとす」
「肩が軽くなる」
「肩で風を切る」
「肩の荷がおりる」
「肩を入れる」
「肩を並べる」
「肩を持つ」
「肩書き」などがあります。

 このように、権威や威力の象徴として、また責任や重いものを引き受ける部位として「肩」という言葉が使われています。

 また、「首」のついた言葉も多くあります。

「首が危ない」
「首が飛ぶ」
「首が回らない」
「首にする」
「首を突っ込む」
「首を長くする」
「首をひねる」
「首位」
「首席」
「首都」
「首相」
「首脳」
「党首」などがあり、
「首」には重要な部位という意識があるようです。

 ちなみに肩こりに相当する英語はstiff neck となり、直訳すると「首こり」になります。日本人は肩への意識が強いので、首から僧帽筋にかけてのこりや痛みも「肩こり」と表現しているのであり、実際にこの部位のこりを訴える場合が多いのです。

 また、日本人特有の気質も関与していると思います。思いやりの気持ちが強く、周囲の人への気遣いができる人が多くて、大変素晴らしいことです。しかし、気遣いが多すぎたり、言いたいことも言えずに我慢していたりといったことが続くと、知らぬ間に精神的ストレスを溜め込んでしまうことにもなります。実際に診療現場でもそういう人が多くみられ、肩こりも多く伴っています。ストレスを溜め込まないための工夫が必要でしょう。

 (次回に続く)
2018年10月05日
 睡眠について(2)

 肝に貯蔵されている血が目に入ってものをよく視させ、また筋を養っています。ですから、例えば

真夜中にパソコンを長時間見たりして目をよく使うことを続けていると、本来貯蔵されるべき血が目に送られて消耗されてしまうので、

肝血が不足していき、

目の疲れ以外にも髪の毛のつやがなくなったり抜けやすくなったり、

爪の光沢がなくなって割れやすくなったり、

月経不順になったりします。

 このように、陰の不足が生じて、陰陽の不均衡が生じます。血は気に対して“陰”であり、睡眠によって養われます。こういった理由からも、特に女性の方は無理をしないようにしてほしいものです。

 中国元代の医家「朱丹渓(しゅたんけい)」は

「陽は余り有り、陰は不足す」

の観点から陰を養い陽を抑制することが養生の主要原則であるとしました。現代においても、このような考え方が必要であるといえそうです。

 このように、生体の陰陽調和のためにも睡眠が重要であることがおわかりいただけたと思います。
2018年09月21日
 睡眠について(1)

 睡眠については、その時間帯に意味があります。陰陽の観点からみれば、真夜中の0時が陰が最も強い(陰の極みの)時刻であります。

 気血津液は、陽の盛んな時間帯である日中に全身を活発に巡り、陰の盛んな時間帯である夜になるとその巡りは最小限となり、内臓に帰っていくという見方をします。血は肝に帰ってそこで貯蔵されます。このように、夜の時間帯は本来、内臓が休息して復旧にあたる時間帯です。体内の陰を養う時間帯です。

 したがって、陰の極みである真夜中前後の時間帯(午後10時頃〜翌午前2時頃)が一番それにふさわしい時間帯であるのです。ですから、例えば午後11時から翌午前5時までの6時間の睡眠と、午前1時から午前7時までの6時間の睡眠とを比べると、同じ6時間睡眠ではありますが、内臓の休息および回復のためには前者の方が有利なわけです。

 昔から言われている「早寝早起きは三文の徳(得)」は、この点からも有意義なことばと言えるでしょう。

 (次回に続く)
2018年09月07日
 飲食について(2)

 『素問』『霊枢』において飲食についての記載が多くみられます。第2章で五行色体表を紹介しましたが、そのうちの五味についての記載があります。

 まず五味の作用ですが、

・辛味のものには発散作用

・酸味のものには収斂する(=ひきしめる)作用

・甘味のものには緩和(=緊張をゆるめる)作用

・苦味のものには固めて乾燥させる作用

・鹹味(かんみ)(=しおからい)のものにはものを柔軟にする作用があります。

 酸味の食物は肝を補い、苦味の食物は心を補い、甘味の食物は脾を補い、辛味の食物は肺を補い、鹹味の食物は腎を補います。

 このように五味の考え方をうまく利用すれば病の改善にも役立つのですが、摂り過ぎは禁物。逆効果になったりするので注意が必要です。

 他にも飲食に関する東洋医学の考え方は多々ありますが、それは他書に譲りたいと思います。

 食べ物にも「気」があるということを忘れずにいたいものです。

2018年08月24日
 飲食について(1)

 「天人合一」思想でもあるように自然界が人間に影響を与えますが、その自然界から得られる食べ物も同様に私たち人間に対して、さまざまな作用を及ぼします。

例えば、辛いものを食べれば汗が出ますし、下痢のときに梅干しを食べるとおさまったりしますね。

刺身に大葉や山葵(わさび)がつくのも、食中毒や蕁麻疹の予防のための薬のようなものとしての意味もあるわけです。

ちなみにこのような考え方を発展させたものとして漢方薬があるのです。

 また、自然にとれる各季節の食べ物は、その季節の体に摂取するのがもっともいいといえます。

例えば、スイカやキュウリなど夏に収穫される果物や野菜には体を冷やすものが多いのです。

これは暑い夏だからこそよいのであって、冬にこういうものをとり過ぎると体を冷やしてしまいます。

 旬(しゅん)のものは美味しいですよね。その季節に合ったいい気が充満して、その季節の身体だからうまく適合するのだと考えられます。

 住んでいるその土地で育った作物を食べるのが一番よいとされる「身土不二」の考え方もあります。拡大解釈すれば、日本に住んでいる人は、外国で生産された食物よりも日本で生産された食物を摂取する方が体によいという考え方ともいえるでしょう。

 (次回に続く)
2018年08月10日
 呼吸、姿勢、運動について(7)

 太極拳の「推手(すいしゅ)」も、呼吸、姿勢、動作のすべての重要な要素が含まれた大変素晴らしい運動です。

 他には、高岡英夫氏の「ゆる体操」も心身のリラックスのために有効でしょう。

 相撲の「四股踏み」も非常にいい運動だと思いますが、女性は敬遠しそうですね。

 先ほども述べましたが、圧倒的に上実下虚の人が多く、弁証でいえば「肝実腎虚」のタイプが多くみられます。

 腎は下半身との関わりが大きいですから、下半身の運動を行うことで腎の活性化につながり、気の下降する力をつけることになるのです。

全身まんべんなく運動すればいいのですが、どちらかといえば下半身の運動に比重をかけていただければよいでしょう。

 ゆったりとした運動のみで十分ですので、ご自身に合ったものをみつけて実行してみてください。

2018年08月03日
 呼吸、姿勢、運動について(6)

 以上、呼吸と姿勢について述べてきましたが、これらのことも踏まえて身体にとって良い運動について、触れておきます。いずれも気の流れがよくなるなど多くの効能があります。他にも良いものがたくさんあるのですが、詳細については別の機会に紹介できればと思います。

 まずは、「甩手(スワイショウ)」

 肩幅くらいに両足をひろげて立ち、立身中正の状態で、両腕は完全に脱力してだらりとしておきます。そして、コマが回転するように腰をゆっくりと左右交互に繰り返し回転させます。そうすると、回転するたびに両腕が振られて胴体に巻きつくような感じになれば、両腕が脱力できていることになります。

 イメージとしては、でんでん太鼓がピッタリでしょう。回転を少し大きくすれば、遠心力で両腕が引っ張られていくように感じるはずです。そうなればしめたものです。これを5分から10分程度すればよいでしょう。

 そして、「馬歩(まほ)」

 簡単にいえば、両足を開いて中腰になる格好で、馬に乗っているような姿勢、あるいは見えない空気椅子に座っているようなイメージです。

 肩幅の1.5倍から2倍くらいに両足をひろげて立ち、立身中正の状態で、股関節と膝関節を軽く曲げて骨盤を下ろしていきます。上半身が前傾しないように気をつけます。そして、両腕は大きな丸太棒を抱えているようにして、両手が胸の高さにくるようにします。

 *馬歩の説明は、言葉や画像をいくら並べてもどうしても正しく伝えきれないところがありますし、間違った解釈をされたりしますのでこれくらいにしておきます。直接指導してもらえる人を探してみてください。

 (次回に続く)
2018年07月27日
 呼吸、姿勢、運動について(5)

 さて、ここで、「猫背」や「なで肩」は本当によくないのかを考えてみましょう。

 『大辞林』によると、
「猫背」とは、背が後方に丸く曲がり、首が前に出た状態。脊柱後湾症。円背。

「撫で肩(なで肩)」とは、(なでおろしたように)なだらかにさがっている肩。

反対語として「怒り肩」があり、高く角張った肩、と記載されています。

 この定義に従っていえば、猫背はたしかに改善できるものならした方がいいといえるでしょう。しかし、なで肩はどうでしょうか。なで肩は整形外科的な特殊な病態を除けば、先ほど紹介した姿勢の要諦の観点からも、別に一般的には問題なく、むしろ怒り肩にならないように注意した方がよいといえます。

 誤解のないようにしてほしいのは、リラックスした自然体においても「怒り肩」にみえる人もいますが、それは骨格の形状によるものなので問題ありません。

 (次回に続く)
2018年07月20日
 呼吸、姿勢、運動について(4)

 次に姿勢についてお話しましょう。

 日常生活の大半は、座位あるいは立位(歩行も含めて)になると思います。いずれにしても、上半身の姿勢のあり方は共通したものがあります。

 この理想的な姿勢を考える上で、非常に役に立つものがあります。それは、伝統武術における姿勢です。中国内家拳のひとつである太極拳には、いくつかの姿勢の要諦(ようてい)と呼ばれるものがあります。肩こり解消のヒントもここにあります。これらを紹介していきます。

 「沈肩墜肘(ちんけんついちゅう)」
 頚から肩にかけての筋肉(僧帽筋など)の緊張をゆるめて肩や肘が自然に下りるようにします。

 「含胸抜背(がんきょうばっぱい)」
 これは水平面(地面と平行の面)上での話と考えてください。平たくいえば、胸を反(そ)らせすぎず、また逆に丸め過ぎず、その中間のリラックスした自然体ということです。

 → ちなみにこれらは普段の動作においても意識をすれば有用です。背中を通ってきた気を手先までスムースに通しやすくなります。これは整形外科的にいえば、肩の深層部にあるインナーマッスルがしっかり効いて安定するゼロポジションに近づける動作ともいえ、肩周囲の筋肉などに無理な負担がかかりにくくなります。

*ゼロポジション:肩甲骨の棘突起と上腕骨の長軸が同一方向になるポジショニングのこと。

 「立身中正(りっしんちゅうせい)」
 簡単にいえば、上半身が地面と垂直になるように、すっと真っ直ぐ立つことです。横から見たときに、胴体に対して頭が拳ひとつくらい前に出ている人をよく見かけます。日頃から後頭部を軽く後ろに引く意識を持ってみてください。但し脊椎(いわゆる背骨)の形状には個人差があります。痛みや過度な筋緊張を伴うようでは逆効果ですので、無理はせずに可能な範囲でいいので、心がけてみましょう。

姿勢の要諦には他にも腰や仙骨に関するものなどもありますが、ここでは割愛させていただきます。

 (次回に続く)
2018年07月13日
 呼吸、姿勢、運動について(3)

 以上、3種類の呼吸法を挙げましたが、この中で特に重要視したいのが逆腹式呼吸です。

 気功法や武道においても特に大事な呼吸法ですが、この呼吸法を習得して実践することで、いわゆる丹田が充実していきます。体内の気の動きには、昇降と出入がありますが、気の上昇の力に比べて下降の力が弱い人が、現代人には圧倒的に多くみられます。この逆腹式呼吸を行うことで、気の下降の力をつけることができるのです。ぜひ、実践してみてください。

 なお、呼吸法を行うにおいては、口唇(くちびる)は閉じて、上口蓋(口腔内で、上の歯茎より少し奥の部位)に舌先の表面が軽く接触するようにしてください。そうして鼻呼吸を行うことで、体内に充実した気が漏れずに巡りやすくなります。

 また、特に慣れていない人が逆腹式呼吸をすると、かえって疲れてしまうこともありますので、はじめは5回から10回前後までにしておいて、その後はゆったりと自然な腹式呼吸を行えばよいでしょう。
 
 呼吸については、『太極拳と呼吸の科学』(楊進,雨宮隆太,橋逸郎著)にわかりやすく書いてありますので、参照してみてください。

 (次回に続く)
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