よもやま話
2018年02月16日
 五蔵(4)

 肺(はい)

 肺は五行では「金」に属します。呼吸を通して「清らかな気」を体に取り入れる働きは、西洋医学でいう肺の機能と共通しますが、東洋医学ではそのほかに、体内の水液代謝に対しての作用なども担っています。肺の機能が異常になると、咳・痰や息切れ、喘息などの呼吸器症状のほかに、津液代謝とも関わっているので、尿量減少や浮腫(むくみ)などの症状も出やすくなります。

 腎(じん)

 腎は五行では「水」に属します。西洋医学的な排尿の働きを含んではいますが、それは一部の働きで、他にもっと重要な働きが多くあります。腎は、人の生長発育と生殖機能にかかわる非常に重要な生命力のもと(=腎精)と考えられています。したがって、性機能や排卵・月経などの周期的変化と関係が深いほか、骨の発育や維持、歯・毛髪などとも深い関係があります。
 
 腎は水液代謝の調節にも関わっています。その機能が低下すると、排尿の異常や夜間尿などの症状が現れます。また、脾や肺などの内臓がはたしている水液代謝方面での機能を促進する働きをも担っています。このようにして、腎は人体の水液代謝の過程の中で終始極めて重要な働きをしています。

 腎は納気作用といって気を納(おさ)める作用があるので、腎が弱ると息が吸いにくくなったりします。

 腎の陰陽は体全体の陰陽に影響を与えやすく、腎の異常によって陰陽失調による全身症状も現れます。

 さて、以上五臓の名称は西洋医学でもお馴染みですよね。ただし、上記の臓器の名称は本来日本東洋医学において設定された名称で、こちらが本家本元なのです。それが幕末に杉田玄白がオランダの医書「ターヘルアナトミア」を日本語訳する際に、解剖学的にみた臓器に東洋医学の五臓六腑の名称をあてはめたことにより、紛らわしくなっているのです。

2018年02月09日
 五蔵(3)

 脾(ひ)

 脾は五行の「土」に属します。脾は胃とともに、消化吸収に関する働きを担っていると考えられており、西洋医学の脾臓とはまったく考え方が違っています。

 脾の生理機能は運化と統血の二つの方面に包括されます。

 運化は、脾に飲食物を消化しその中の栄養物と水液を吸収し、心肺に輸送する働きがあることを指しています。脾の運化機能が異常をきたすと、消化吸収機能の減弱から腹が張るとか軟便がみられ、水液代謝の異常からは水湿停滞が発生し痰飲や水腫がみられます。脾の消化吸収機能は実質的には小腸と膵臓等の器官の消化吸収機能を概括したものといえます。

 統血は、脾が脈管中を流れる血液を統摂して脈外にあふれ出るのを防止する機能があることをいいます。脾が弱って統血機能が低下すれば、便血・子宮不正出血・皮下紫斑等の各種の出血症が引き起こされることになります。実際臨床的にみても、青あざ(青たん)が出来やすい女性は甘いものが好きで脾を傷めているケースが非常に多いものです。心当たりがありませんか?
2018年02月02日
 五蔵(2)

 (前回からの続きです)

 肝(かん) 

 女性の月経の周期や経量等が正常かどうかは肝の疏泄機能と深い関係があります。これは肝に関わる肝経が直接的に生殖器に関わる、ということと、下記の通り、血に深く関わる臓器であるからです。

肝気が順調に達し、血脈が流通していれば、月経は順調となります。肝気の流れが悪くなれば月経不調が発生し、乳房や下腹部が脹痛したりして、ついには月経痛・閉経・不妊などが発生します。

 次に、肝の蔵血機能は、肝が血液の貯蔵と血流量調節の生理機能を具えていることを指しています。肝の蔵血機能の異常は一般的には二つの方面の病変として現れます。

 一つには蔵血不足、即ち肝血不足です。肝血が少ないために人体の正常活動の需要をまかなうことができず、頭がふらつく・目がかすむ・手足に力がない等の症状が出現します。婦人では月経量少なくて経色も淡くあり、ひどくなると閉経等となって現れます。

 もう一つは肝が蔵血の機能を果たさないという場合で、このときは、吐血・鼻血など顔面部からの非外傷性出血・月経量の増加、子宮の不正出血等の多種の出血症が発生することがあります。
2018年01月26日
 五蔵(1)

 東洋医学における五臓について簡単に説明しておきます。

 心(しん)

 「心(の臓)」は五行では「火(か)」に属します。血液の運行を推進する機能を持つとともに、精神活動を概括しています。つまり、西洋医学でいえば脳の働きに関係する部分も「心(の臓)」の働きとしてとらえています。

 東洋医学的は「ココロ」とは脳ではなく、心の臓、すなわち胸の中にあると本当に考えています。脳はあえていうならば「データを蓄積し、分析するコンピュータのようなもの」と考えればよいでしょう。

 肝(かん)

 肝は五行では「木(もく)」に属します。その主な働きは「疏泄(そせつ)」機能と呼ばれるものにあり、西洋医学の考え方と大きく異なります。疏泄とは、気の流れをのびのびと行き渡らせる働きがあるということです。それにより、血液の流れと津液(しんえき)の代謝を促進します。

 肝の疏泄機能は、脾胃の消化に対し協力と援助の働きをしています。もし肝の疏泄機能に異常が起こると脾胃の消化機能に影響し気の運動が不調となります。また情志の異常な変化が生じて、主に抑うつと興奮の形で現れてきます。

肝気が抑うつすると、気分が悪くなり、しばしば愁(うれ)いよく塞ぎます。肝気が興奮するとイライラし容易に怒りだします。

 肝は蔵血の機能も有しています。

(次回に続く)


2018年01月19日
      気・血・津液と臓腑経絡

 臓腑経絡

 西洋医学はさまざまな機能を有する“部分”が集合することによって、一つの生命体を生命たらしめている、という考え方であるのに対し、東洋医学はまるごと一つとしての身体のうちに必要な機能や組織が存在する、という考え方です。

まるごと一つの身体のうちに、五臓という典型的な五行の働きを見出して身体全体の機能や組織を規定してゆく、という考え方なのです。そして五臓六腑を幹とし、経絡を枝葉として、両者は一体のものとして相互に影響を与え合っています。

 五臓には、肝、心、脾、肺、腎があり、六腑でできた栄養物質を貯蔵するところであり、六腑には、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦があり、飲食物を運搬し、その運行中に消化吸収を行い、体内に必要となる清らかなものを残し、不要なものを二便(大便・小便)として排泄するために、清濁の選別をします。三焦は消化吸収、排泄の全ての機能に関係しています。

他に、奇恒の腑として、脳、髄、骨、脈、胆、女子胞(子宮)がありますが、詳細は割愛します。ここでは並列的に表記しましたが、あくまでも五臓が中心です。

 経絡は気血を運行させる通路であり、経脈と絡脈の総称です。

 経絡は十二経脈が主で、他には十二経別、十二経筋、十二皮部が含まれます。

これらは決して、西洋医学にいう血管や神経という概念とは一致するものではありません。あくまでも“狭義の気(営気)”が順行するルートであり、経筋はその気によって支配される筋肉系統、とご理解ください。

また経穴(ツボ)の多くは十二経脈に所属しており、鍼や灸を行う、ということはその経穴を通じて、経絡を調整し、その結果五臓六腑・気血のアンバランスを治す非常にすぐれた方法論といえましょう。
2018年01月12日
      気・血・津液と臓腑経絡

 気血津液(3)

 血(けつ)は、脈中を流れて栄養・滋潤作用を持つ赤色の液体のことです。必ずしも同じではありませんが、みなさんがイメージする血液に近いものと考えていただければよいでしょう。毛髪や爪、身体の柔軟性に“血”の健康状態があらわれます。

 体内の血が不足した状態を血虚(けっきょ)といい、毛髪のつやがなくなったり、抜け毛が多くなったり、爪が割れやすくなったり、目がかすんだりします。月経量も減少したり、月経不順になったりします。また、こむら返りなどもおこりやすくなります。

 また、血の流れが滞(とどこお)りやすくなった状態を血瘀(けつお)といい、月経痛などの痛みを生じやすくなります。

 なお、気滞になると血の循環が障害され、逆に血の循環が障害されると機能停滞をきたすので、よく気滞血瘀という両者が合併した状態が発生します。

 津液(しんえき)は、血液以外の体内の水分全般のことをいいます。皮膚・毛髪などを潤し、眼・鼻・口・舌なども潤します。さらに臓腑も潤して養うのです。津液が不足すると、上記の部位の乾燥の症状がみられます。

 津液の流れが悪くなったり汗や尿などとして排泄されるところで障害が発生すると、津液が停滞して異常な水液となり、それ自体が新たな病邪に変わってしまいます。その程度が軽いものを水湿といい、程度が進んだものを痰飲や水腫といいますが、はっきりとは区別しがたいところもあります。

 生命活動を維持する基礎物質として、他には精(せい)というのがあり、生命エネルギーの基本となる物質です。
 精には「先天の精」と「後天の精」があります。
2018年01月05日
      気・血・津液と臓腑経絡

 気血津液(2)

 (狭義の)気が不足した状態を気虚(ききょ)といい、いわばパワー不足の状態であり、疲れやすかったり、やる気が出なかったりといった症状が現れます。

 (狭義の)気の流れが滞(とどこお)りやすくなった状態を気滞(きたい)といい、精神的ストレスなどで生じやすく、胸やお腹が脹(は)って苦しい感じや脹った痛みなどの症状が出やすいです。他の部位でも同様の症状は出ますし、肩こりも気滞が関与していることが多いです。

 (狭義の)気は、体内を上昇したり下降したりして巡っているのですが、気滞という状態のなかで特に「下降すべき気が下りずに逆に上昇する」ことがあり、これを気逆(きぎゃく)と呼んでいます。

 最初に人体の広義の気、について述べましたとおり、広義の気をその機能や存在形態の違いからあえて狭義の気・血・津液に分けてお話ししております。そしてこの三者をとくに“動静”という観点から陰陽分類すると、狭義の気がもっとも陽であり、さまざまな“変化”を担当している、ということです。
2017年12月29日
      気・血・津液と臓腑経絡

 気血津液(1)

 “気”という言葉には様々な意味が含まれます。そもそも東洋医学といいますか、古代からの中国の気に対する認識でいえば、森羅万象がすべて“気”によって成立しています。あなたも気、そのものであるし、あなたの目の前にあるパソコンも気、パソコンを載せている机も気、空気も気、すべてが“気”なのです。

・・・・が、ここでは人体に限って気を説明いたします。

 誤解を恐れずいえば、いまあなたが存在し、生命活動していることこそが気が存在し、気が機能している、ということです。気とは流動するエネルギーでありながらも、その動きが小さくなれば目に見える物質として存在しますし、それとともに、機能を発するものなのです。

おおざっぱにいえば、これが人体における“広義の気”ということになります。その人体における広義の気をなんとなく捉えるだけでは人体の状況が把握しにくいので、さらにおおざっぱに気(狭義)・血・津液に分けて理解します。

 (狭義の)気は姿かたちはありませんが、まず、気の存在そのものが“動”という性質を持ち、他の血や津液を正常に運行させます。また、気の存在そのものが温性を持ち、十分気があることによって、身体の温かさを保持します。

そして、人体における気は人体の生命活動を保持するために、体外からの侵襲に対して対抗する機能をもち(西洋医学でいう免疫機能)、さらには人体の形体の恒常性(翌朝起きて鏡をみてもやっぱりあなたの顔がそこにあるでしょう?)を保ちます。

 (西洋医学的な表現になりますが)体内においては内臓や血管や骨格がやはり正しい位置にあり、またそれらに関わる体液全般が正しいルートを流れさすことができる、ということです。
2017年12月22日
 五行論(4)

 五行の考え方は、体内のバランスをとる方法としてばかりでなく、体の臓器や機能の相互関係を理解するときにも応用されます。さらに、行と行の間の相互関係ばかりでなく、同じ行に属するもの同士の関連について示唆してくれる理論でもあります。

 たとえば、五行色体表をみていただくと、肺と皮膚と大腸はみな「金」に属しています。この属性は、皮膚疾患を治療するときに肺に作用する生薬を用いたり、便秘の薬と咳の薬が共通していたりすること(たとえば杏仁という生薬には、通便作用も鎮咳作用もあります)を説明してくれます。

 面白いと思いませんか。

 腎と膀胱と耳と骨は同じ「水」に属しており、実際に腎が弱ると骨粗鬆症になったり、頻尿になったり、耳鳴りがしたりします。繰り返しになりますが、要するに東洋医学の考え方のもとでは、内科、皮膚科、泌尿器科、呼吸器科・・などといった考え方はせずに、まるごと一つの身体として認識するがゆえに、湯液や鍼灸が全科にわたって威力を発揮するのです。

 更に、自然界と人体との関係を理解する上においても、この五行色体表は役に立ちます。

 しかし、この相生と相克の関係は、五行のそれぞれが正常な状態にあるときでなければ働きません。病的な状態では、その弱さに乗じて抑制がさらに強まって、ますますそのものを弱くさせてしまう「相乗」という関係になります。

 また、病的な状態では、通常なら抑制している相手に逆に抑制されることがあり、それでますますそのものが弱ってしまう「相侮」という関係もあります。このように「相乗」「相侮」は相克関係の異常であります。

 このように、五行は互いに絶妙なバランスをとり合っていますが、それもある程度の範囲内でうまく働くことであって、無理な行動や無茶な生活を重ねているとこのバランスが破綻してしまい、逆に病気を増悪させるしくみに変わってしまうというわけです。ですから私たちは、体の中で「相生」「相克」が働くように保ち、「相乗」「相侮」が起きないように生活をコントロールすべきなのです。


2017年12月15日
 五行論(3)

 しかし、どれか一つの勢いが盛んになれば、他のものの勢いも盛んとなり、それによりまた自身の勢いがさらに盛んになってしまって歯止めが効かなくなってしまいます。そうならないように、「相克(そうこく)」という関係でお互いを制約・抑制しています。

 ・木は“孫”にあたる土を抑制する関係にあって、木は根を土の中に張って土を締め付け、養分を吸い取って土地を痩せさせます。

 ・土は水を吸い取り、あふれようとする水をせき止めます。

 ・水は火を消し止めます。

 ・火は金属を溶かします。

 ・金属製の斧や鋸は木を傷つけて切り倒します。

以上をまとめると五行相克の順序は、木克土、土克水、水克火、火克金、金克木、となります。

 このように、五行の間の関係は相生と相克が密接に結合し、バランスをとり合っているのです。五行学説は、おもにこの理論で自然の機構の変化や自然界の生態における平衡関係そして人体の生理を説明するわけです。陰陽論がより動態的にリアルなものとして認識できる概念ともいえるでしょう。
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