よもやま話
2018年04月27日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(3)

 最後に、東洋医学における治療の原則(治則)と治療方法(治法)の概略だけお伝えしておきます。

 治療戦略としての治則には治病求本、標本緩急、扶正、袪邪、三因制宜などがあります。

 具体的な治療手段である治法には2つの概念があり、1つは湯液や鍼灸といった生体へのアプローチの違い、もう1つは、弁証に基づいた具体的な治療法です。たとえば熱証には冷やす治法の清法、塊を取り除くには消法…といったような考え方です。

 なお、「孫思邈(そんしばく)」と「王とう(おうとう)」は、鍼灸および湯液(漢方薬治療)を互いに組み合わせる総合療法が治効を高める、と主張しました。

「孫思邈」は、「湯液その内を攻め、鍼灸その外を攻むれば、則ち病の逃る所なし」といい残し、「王とう」は、「灸を知り、薬を知らば、固(もとよ)り良医と為す」といっています。ご参考までに。
2018年04月20日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(2)

 四診が済めば、次は弁証です。

 弁証とは、証を弁(わきま)えること。

 主な弁証方法として、八綱弁証(表裏寒熱虚実陰陽)、気血津液弁証、臓腑経絡弁証などが主となります。

 また、風邪やウィルス感染症などに対しては、外感熱病弁証(六淫の外邪、疫癘(えきれい)の邪を感受することによって起きる熱病に対する弁証)として、六経弁証、衛気営血弁証があります。

 以上の各弁証を総合して、各患者さんごとの「証」を決定していきます。それと同時に、各弁証内容と問診情報を照らし合わせて、その人の病因(病の発生原因)と病機(疾病の発展変化のしくみ)を考えます。この証と病因病機から治療方針を決定していくのです。この過程をまとめて、弁証論治(べんしょうろんち)(=証を弁えて治を論ずる)といいます。

 以上が、東洋医学における診断から治療までに流れになります。イメージは伝わりましたでしょうか。要するに医師側の五感を働かせて情報収集(四診)を行い、得られた情報に基づいて必要なモノサシでそれらを評価し(各種の弁証)、その評価に対して適切な対処法を模索・決定する(論治)、ということです。
2018年04月13日
 東洋医学における診断と治療(弁証論治)(1)

 以上の気血津液、臓腑経絡の話を踏まえて、では実際に東洋医学ではどうやって診断を行い、どういう治療を行うのかについて、その概略をお話いたします。

 まず、診断においての基本となるのが、「四診合参(ししんがっさん)」です。四診とは、望診、聞診、問診、切診の4種類のことで、それぞれの診察から得た情報をまとめて総合的に診断することを合算といいます。

 では、それぞれについて簡単に説明します。

 望診(ぼうしん)とは、視覚によって全身および局所を観察することです。内容は神色形態、皮膚、望舌(舌診)があります。

 聞診(ぶんしん)とは、患者さんの声の聴取と臭いを嗅(か)ぐという二つの内容があります。

 問診(もんしん)とは、患者さんの主訴(主に治したい症状など)、現況(現在の生活状況など)、家族歴、既往歴、現病歴などを問うことです。具体的内容は一般事項(主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活習慣)と、主訴の緩解・増悪因子、その他の症状、飲食、睡眠、排泄物(二便、汗、痰など)、月経状態などを問います。
 
 私どものクリニックでは初診時に丁寧に問診させていただいています。

 切診(せっしん)とは、患者さんの身体に触れることにより病状を知る方法です。主に中国では脈診を以て切診とすることが多いですが、本邦においては脈診のみならず腹診、背診、切経(経絡を手でなぞって虚実などを評価する)などを行うこともあります。
2018年04月06日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病機

 病機とは疾病の発生と発展変化のしくみを指し、また“病理”ともいっています。臨床上、診断と治療の拠り所となるものです。先に述べた臓腑や気血、経絡などがどのようなアンバランス状態にあるのか?ということを知ることができるのです。

 複雑な疾病の発生も、正気虚弱と邪気の侵犯の二つの要因の関係にまとめることができます。正気と邪気・・つまりは、正常な機能やその物質的基礎(気や血)が“邪気”というものに対して表現されるときに、あるいはそれらが邪気に対して防衛的機能を発する時に『正気』と表現し、その正気を逼迫(ひっぱく)する六淫や七情の過不足から引き起こされる気滞、痰飲、瘀血などが『邪気』と表現されるのです。

 病の発生においては、正気が充実しておれば邪気は病変を引き起こすことはなく、正気に不足があってはじめて邪気が乗じることができるのです。

 実証とは、邪実が主体の病変です。

 虚証は、正気の不足(正気虚)が主な病態であり、気・血・津液・精などの不足を意味します。

 おおざっぱにいえば、活動するためのエネルギーが不足したものが正気の虚であり、エネルギーが体内をめぐるのを阻害するのが邪気(邪実)です。ある病態において、正気虚、邪気実のいずれが主体なのか、ということを知る概念だということです。


2018年03月30日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(6)

 3.その他の病因

1) 痰飲(たんいん)
 痰飲とは水液代謝の障害により形成された病理変化と病理産物であるとともに、それ自体が病因となるものです。病理産物としては、一般的に、粘稠で濁ったものが痰、稀く透明なものが飲と考えられています。

喉に絡んだ、あるいは喀出される痰だけが痰、というわけではないのです。血以外の体液の停滞すべてを認識しております。たとえばガングリオンや浮腫み、といったものも痰飲として捉えて治療いたします。
 
2) 瘀血(おけつ)
 瘀血とは体内血液の停滞を指し、経脈を離れた血液が体内に停留した結果としての病理産物であり、同時にそれにより血液の流れが滞り臓腑経絡が阻害されるという病因にもなります。

とくに“血を以て本となす”女性にとってはかかわりの深い病理産物であり、働く女性が過緊張によって肝気の鬱結(うっけつ)を起こして気滞を生じ、その結果気滞が血を瘀滞させ、結果瘀血の停滞を生み、ひどい肩こり、あるいは子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科疾患を患うケースは非常に多いものです。普段から肩こり知らずの毎日を送り、心身の緊張をため込まないことが大切ですね。

2018年03月23日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(5)

2.内傷の病因

3)労倦内傷(ろうけんないしょう)
(1) 過労
・労力の使い過ぎ
・精神の使い過ぎ
・房事過多
の三つの意味を含んでいます。労力過度は人体の精気を消耗させます。

・精神の使い過ぎ
 長い間、頭脳を使い過ぎると気力・精神虚弱、陰陽失調をきたし、病となります。心・肝・脾の臓に影響が及び、動悸・・不眠多夢・頭がふらつく・イライラし怒りやすい・食欲不振などが出現します。

・房事過多
 過度の性生活は腎を傷つけます。
(a)腰酸膝軟(腰が重だるく膝がふらふらする)
(b)頭がふらつき耳鳴りする
(c)性機能減退、男性では遺精(性交によらないで射精の起こる現象)、インポテンツ、女性では白帯下などが出現します。

(2) 過逸
これは身体をあまり動かさないことを言います。このような状態を続けていると心臓の機能は衰え、脾胃の働きも停滞し、気血のめぐりが悪くなったり、あるいは脂肪が体内に蓄積しやすくなります。

私どものクリニックでは過度の安閑にある方に対しては積極的に行動することをお勧めしております。
2018年03月16日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(4)

 2.内傷の病因

 2)飲食不適
 飲食不適というのは、暴飲暴食したり逆に食べなかったり、また不潔なものを食べたり、偏食が過ぎる等の不適当な食生活をいい、これらのことが疾病の発生原因になることから、内傷病の主要な致病因素の一つとしています。

 飲食物は主に脾胃の消化吸収に依存するので、飲食不適はまず脾胃を損傷して、種々の病変を生み出します。食べ過ぎや暴飲暴食を続けていると、脾胃の消化吸収能力の限界を超えることになり、飲食停滞を惹起し、脾胃を損傷させてしまいます。

その結果、湿が集まり、痰が生じ、ついで喉に痰が絡んで咳が出たりします。飲食による病証は割合に複雑となります。偏食もやはり問題です。人体が必要とする栄養は多岐にわたっているので、食生活については日常から多様な栄養素を取り込むよう注意を払う必要があります。

 また、飲食物には寒涼熱温の性質があるので、もし特別に寒または熱に片寄った食物ばかりを好んで食べておれば、人体の陰陽バランスが崩れ何等かの疾病が発生します。

例えば冷たいものを食べ過ぎると、脾胃の陽気が損傷され、体内に寒湿の邪が生じて、腹痛や下痢が発生します。

油で炒めた熱いものを特に多く食べていると、脾胃の陰液が損傷され、腸胃に熱が積もって、口渇・口臭・便秘等が発生します。

このように、飲食は必ず寒熱の調和をはかり、好き嫌いに任せた偏食を慎まねばなりません。

 さらに五味の偏食にも要注意です。五味と五臓には一定の相性があります。

・酸(すっぱい)は肝に入り、
・苦は心に入り、
・甘は脾に入り、
・辛は肺に入り、
・鹹(しおからい)は腎に入ります。

もしも長期にわたり五味の摂り方がアンバランスだと、五臓の機能に偏盛偏衰をきたしたりして疾病を発生させることになります。

 いずれにせよ、飮食不適によって病んで来院される患者さんが多くみられます。ただ、おそらく100年前と異なるのは、食品が豊富でありすぎるがゆえの飽食、栄養過多があまりに多いことです。ものの無かった時代に栄養不良という意味での飮食不適で多くの方々が命を失った時代に比して、現代人はなんと恵まれていることでしょうか。肝に銘じなければならないと思います。
2018年03月09日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(3)

 2.内傷の病因
 内傷の病因は人体自体に由来し、日常生活での不摂生や精神的・社会的要因が関与します。内傷の病因は、七情内傷・飲食不適・労倦内傷の3つにまとめられます。

1)七情内傷(しちじょうないしょう)
 七情は喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七種の情志活動を指し、喜・怒・悲・恐・驚など外界の刺激による情緒反応と、憂・思という思惟活動があります。

 七情は本来正常な情志活動であり、一定の範囲内であれば発病因子にはなりませんが、ある範囲を超えると発病因子に変化します。

 悲と憂、および驚と恐は性質が同じで因果関係にあるために同類とみなすこともできます。喜・怒・思・憂・恐を五志として、これらの太過(五志太過)は五臓を傷害します。つまり、ある感情の極端な偏りが、関わりのある臓を直接的に傷つけてしまうのです。

(1)喜と驚は心を傷つける 喜べば気緩み、驚けば気乱る

(2) 怒りは肝を傷つける 怒れば気上る

(3)思は脾を傷つける 思えば気結ぶ

(4) 悲しみや憂いは肺を傷つける 悲しめば気消え、憂えば気欝(こも)る

(5) 恐れは腎を傷つける 恐れると気が下がる

「怒は肝を傷つける。」とありますが、この「怒」は怒りの感情のみではなく、「弩」、「努」といった漢字にも通ずるように、心身の緊張をも含んでいます。本来男性に対して陰であり、ゆったり過ごす女性たちが、社会の荒波の中で日々心身を緊張させて過ごすことは、肝の臓を傷つけやすく、そのサインとして肩こりに苦しんでいることも多いのです。

 五志はバランスよくあるべきであり、現代人は喜が不足しています。喜は笑いが伴います。笑うことで健康になろう、という本もよく見かけますが、バランスを重視する東洋医学から見れば当然のことと言えます。衣食住が一定レベル以上にある日本においては、とくにこの七情の過不足が病因となる例は非常に多いものです。
2018年03月02日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(2)

 1. 外感の病因
 自然界の季節・気候の変化あるいは異常気候や環境がつくりだす病因。特徴は皮膚や口鼻から侵入して発病させることです。

 1) 六淫(りくいん)
 六淫とは風・寒・暑・湿・燥・熱(火)の六種の病邪の総称。本来これらは四季の正常な気候の変化を意味し「六気」と呼びますが、気候の変化が異常になって太過(多すぎ)あるいは不及(少なすぎ)が生じる結果として発病因子に変化した場合、これを六淫と呼ぶのです。

普段かかるカゼひき(風寒や風熱が多い)や、熱中症(暑熱)などがこの六淫によるものと考えていただければけっこうです。

 2) 疫癘(えきれい)(=流行病)
 疫癘というのは伝染病を引き起こす致病因素のことです。今でいうインフルエンザをはじめ、デング熱やエボラ出血熱といったものがこの類に属するといえるでしょう。
2018年02月23日
 病の原因としくみ(病因病機)

 病因(1)

 病因とは、人体に疾病を引き起こす原因のことです。

 病の原因として、外から入ってくる、あるいは外界の気候の条件や各人の感情の偏り、またあるいは飲食や疲労、そして物理的な外傷、またこれらから引き起こされる体液の停滞や血液の停滞がさまざまな病態を生み出しうる、という話です。

 ・風・雨(湿)・寒・暑が体表を侵して発病に至った場合、これを外感病因といいます。

 ・飲食・喜怒等が内臓に影響して発病したときは、これを内傷病因といいます。

このように、中医学では常に疾病を外感病と内傷病の二つに大別します。要するに外界の影響を受けて発病するカゼひきやインフルエンザと、飮食の乱れやストレスからくる病の違いですね。

 病因学説は臨床の診断と治療の上に重要な価値を有しています。臨床上、原因のない疾病というものはありません。如何なる疾病もすべてなんらかの原因の影響と作用のもとで、病を得た身体が生み出す病態の反映なのであります。
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